動物看護士おもちせんせいの ペットと健康でハッピーなくらし

動物看護士おもちせんせいです。動物病院をはじめ、様々な動物業界で仕事をしていました。その経験を活かし、職場でのエピソードやペットや動物との正しい暮らし方を紹介していきます。

身近で本当に起きたらどうする:飼育放棄された犬2

あれから数週間、暑い夏です。そのわんこは相変わらず飼育放棄をされているようです。家族の姿を見たことはありませんが、わんこが世話をされている姿も見たことはありません。

 

私は悩んだ末、ある方にヘルプの電話をしました。その方は、捨てられた犬や猫、迷子の子などを保護し、里親を募集する団体に加盟しているAさんです。Aさんは普段、ペット火葬を営む傍らで、一人で数十頭の動物の世話していました。

お忙しい中、とは思ったのですが、電話で状況を説明すると、すぐに様子を見に来てくれました。そして、その後も何度か見に来たらしいのですが、やはりどう見ても飼育放棄をされているようで、このままだと命の危険性があると指摘しました。

Aさんが家族の方に話をしてみるとのことでしたので、私はAさんにわんこを託し、報告を待つことになりました。

そのずう実後、Aさんから電話がありました。

あの子は、私が無断で引き取った。

というのです。

というのも、何度訪問しても、留守、もしくは居留守で話ができない状態であり、わんこの健康状態も良くないとのこと。

そして、そのわんこはまだ幼いようで、そのため人間に恐怖や威嚇といった態度を取らないようだということ。

つまり、保護した結果新しい飼い主さんに巡り合える可能性も高いのだそうです。

私は、正直安心しました。しかし、無断で連れて行ってしまったことに関しては、責任を感じています。

その後、何度かそのお宅を見に行ったのですが、エサ入れなどはそのままで、掃除もしていない、探した様子もありません。もしかしたら、いなくなったことに、気が付いてもいないかもしれません。

 

その数か月後、Aさんによって保護されたわんこは、「サスケ」と新しく名前をもらい、とある老夫婦のお宅に里親が決まったと連絡がありました。

その後、Aさんの元を訪れる機会がありました。その際に、Aさんは私にサスケの写真を見せてもらいました。サスケは、同じ犬とは思えないくらい、健康的な肉体になっていました。そして、あの可哀想な目つきは、もうしていませんでした。

とても、可愛らしく、良い笑顔に見えました。

そして、あの家族は、いつの間にかサスケの飼育用品を置いたまま、引っ越してしまったようです。残されたエサ入れ、犬小屋、そして首輪のついたくさり・・・。本当にそのままです。

 

私のしたことは、正しいとは言い切れません。他の人の所有物を勝手に奪ってしまうのは、泥棒と変わりません。でも、このままだと、サスケの未来はなかったように思えます。

サスケのことだけを考えると、本当に良かったと思います。Aさんの決断も、最終的なものだったでしょう。なぜ、あの家族はサスケを家族に迎えたのでしょう。小さな子供もいたはずです。

サスケにしてみれば、新しい環境で、初めて人間の愛情に触れることができたのでしょう。当たり前のことを、当たり前に与えられない。それは、どれほど悲しいことなのでしょう。

ペットを迎える前に、なぜペットが欲しいのか、どのような世話が必要なのか、デメリットがあるのか、迎えることによりデメリットの面も、理解してからお迎えして欲しい。そんな気持ちでいっぱいです。