動物看護士おもちせんせいの ペットと健康でハッピーなくらし

動物看護士おもちせんせいです。動物病院をはじめ、様々な動物業界で仕事をしていました。その経験を活かし、職場でのエピソードやペットや動物との正しい暮らし方を紹介していきます。

混合ワクチンの重要性!適当な飼い方はしないで!それって本当に猫が好きなの?多頭飼いしすぎる人

犬は散歩をしなくちゃいないし、なにかとお金がかかるでしょ。だからうちは猫を飼っているの。

 

この考え、どうなんでしょう。実際、こういった「猫はお金がかからず散歩もいらないから気軽に飼える」と考えている方が多いのが現状です。飼育スペースも狭くてすみますしね。そういって面では、猫より犬を飼育する方のほうが「生き物を飼う」という認識が強いかもしれません。

多頭飼いの猫好きAさん

ある日、一本の電話が病院へ入りました。その電話を受けた看護士は、電話を切ったとたん顔をしかめました。

「また、あの猫の多頭飼いの人だよ」

ため息交じりに言いました。「どうかしたんですか?」と聞くと、

「その人、猫が好きですぐに拾ってくるんだけれど、ろくな飼い方をしていないの」

とのこと。その方は猫が好きな70代の主婦、Aさん。話を聞くと、Aさんは猫が大好きで、野良猫などを見るとすぐに保護してしまうそうです。それは良いのですが、世話としては基本的にエサをあげるだけ。外と家を自由に出入りできるため、いつの間にか猫が増えているそうで、自分でも何匹飼育しているか把握していないそうです。

「それだけじゃないの」看護士は続けました。

「Aさん、猫の混合ワクチンや避妊・去勢を一切しないものだから、前に集団感染で何匹も死なせてしまったの。今回も、症状を聞く限り感染症の恐れがあるから、感染用の病室を準備しなければならない」というのです。

混合ワクチン

猫も犬もそうなのですが、感染すると命の危険性もある病気があります。その感染予防のために、「混合ワクチン」をするのですが、これは決して義務ではありません。しかし、感染病にかかる割合は低いとは言い切れません。実際に感染症にかかると、その感染率は高く、発症すると急激に病状が悪くなり死に至るものもあります。また、自分の猫(犬)がほかの子に移してしまう場合もありますし、その逆もあります。多頭飼いの場合は、一気に全員にかかってしまう場合もあるため、全ての猫(犬)にワクチンを打ってほしいと思います。

感染病室

今回のように事前に電話で症状を聞いた際、過去の病歴などから感染症の疑いがある場合は、隔離された診察室を用意します。ほかのこと接触しないように入り口も別にあり、医師や看護師は滅菌された専用の着衣を身に付けます。

Aさんが連れてきた9匹の猫

今回、Aさんは9匹の猫を連れてきました。

「とりあえず、今家にいて、具合が悪そうな猫を連れてきたの」

というAさん。

「ということは、まだほかにも猫を飼っているということですか?」医師の問いかけにAさんは頷きます。「あと何匹いるんですか?」この問いかけに、Aさんは「分からない」と答えました。スタッフはあきれ顔です。診察の結果、やはり猫の感染症でした。

「Aさん、以前もこういうことがありましたよね。その際に、元気になったらワクチン接種を約束したはずですよ?」

と医師が言うと、

「お金がなくて・・・ちなみに、今日のお金も次の年金が入ってからでいいかしら、今手持ちがないの」とAさん。ベテラン看護士はすぐにこう言います。

「Aさん、この間の診察代もまだ未払いなんですよ?」

お金がないのに猫を拾うAさんの結末

このように、困った飼い主さんは本当にいます。数日後、またAさんは数匹の猫を連れて来院しました。

「前の子の半分くらい死んでしまって、今度はこの子たちが具合が悪いの」

Aさんが来る時間は決まって診療時間外でした。そのため、通常の診察料金に加え時間外料金が発生します。その数回が未払い。しかも、ワクチンをなかなか打ちに来てはくれません。とうとうしびれをきらした院長は、

「お金を払わない限り、次からは診察はできません」

と言い放ちました。私は思いました。なぜこの人は猫を飼うのだろう。このような飼い方が、猫にとって良いと思っているのだろうか。

結局Aさんがお金を払うことはなく、その後来院もしないため、猫がどうなったのかはわからずじまいという、後味が悪い結末でした。

 誰のためにペットを飼う?猫の気持ちは考えた?猫を飼うのにかかる費用

 

安いエサだけ与えてあとは自由にさせている飼い主さん、それは猫にとって幸せなことではありません。猫にとって下手に居場所を作ってしまうのはよくありません。なにかあったとき、きちんと責任を持てないのなら、猫を飼ってはいけません。

「エサをあげているだけ」

それは猫を飼っているといえます。あなたはしっかりと飼い主なのです。猫だけではありませんが、動物を飼うということはお金がかかります。猫については、キャットフード、トイレの砂などが消耗品で、随時購入しなければなりません。そのほか、おもちゃやケージ、トイレなどの飼育用品、ノミ・ダニ駆除(市販薬では効果はありません)、混合ワクチン、避妊・去勢手術、体調を崩した際の病院代などがかかります。月に5千円~1万円以上(多頭飼いによってはもっと)平均的に出費がかかると思ってくださいそのお金が出せないのなら、生き物を飼わないでください

 

「可哀想だから」そういってなんでもかんでも拾って、安いえさを与え、不衛生で不自由な飼い方をすることは、決してその子の幸せにはならないということを、自覚してほしいものです。