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動物看護士おもちせんせいの ペットと健康でハッピーなくらし

動物看護士おもちせんせいです。動物病院をはじめ、様々な動物業界で仕事をしていました。その経験を活かし、職場でのエピソードやペットや動物との正しい暮らし方を紹介していきます。

私は動物が好きでこの仕事についたはず:動物業界の辛い現実

私は犬や猫、鳥・・・様々な動物が大好きです。もともとは獣医を目指していました。しかし、中学生の途中で大きな病気をしてしまい、学校へ通えず、勉強が追い付かず、なくなく断念しました。これは、そんな私がピジョンハンドラー(ハトの調教士)として働いていた時のお話です。

 

始めに言っておきますと、「殺処分体験談」です。気分を害する可能性があるため、閲覧は自己責任でお願いします。

ハトの繁殖

レース鳩には、レースに出場する選手鳩と、良い子孫を残すための種鳩、種鳩の代わりに卵を温めヒナを育てる仮母(かぼ)が存在します。競馬の世界に似ています。種鳩とは、大きな大会で良い成績を取ったハトが良い血統を残すため、良い血と血を混ぜて繁殖させることがお仕事です。私が働いていた厩舎で、一番高級な種鳩のお値段は3千万以上。命に替えても守らなくてはならないくらい、宝石のような存在です。

血筋と奇形

なので、近親交配は結構多いのです。父親と娘、母と息子、兄妹などなど。良い血筋はそうそういないので、歴代の家系でで交配することは珍しくありません。しかし、そうすると奇形が産まれることもあります。

私が出会った奇形のヒナ

鳩は2つの卵を産み、大体2羽のヒナを育てます。「卵チェック」という作業があり、卵を産んだか、7日目ほどで検卵をする(有精卵・無精卵のチェック)、ヒナが産まれたか、毎日これを朝一番でチェックします。手を親鳥のお腹の中に入れて、「むにゅ」っとした感触があると、「おお、産まれた!」となります。大体卵を産んだ2週間後に孵化します。

ヒナの上には、ほぼ24時間親が乗っているため、なかなか姿を見ることはできません。しかし、ある巣にヒナがいるのにもかかわらず、親鳥が居ませんでした。中には育児放棄をする親もいるため、ヒナの健康チェックを兼ねて様子を見てみると、2羽のうち、1羽が奇形でした。一目で「これは生きることができない」と判断できるほどでした。

まだ羽の生えていない赤子なので、体のつくりが良く分かります。足の生えている場所が明らかにおかしく、そして足の指はぐっと握りしめたような形のまま。これでは大きくなっても立つこともできないでしょう。そして、このような奇形がいると、親は飼育を放棄します。しかし、今回の場合は1羽は正常でした。

飼育責任者に連絡をすると、返ってきた言葉は残酷な物でした。

「奇形のヒナを処分しろ」

と、言われてしまいました。奇形の子をこのまま巣に入れておけば、もう1羽の命も危ないのです。そのヒナは本当に産まれてまもないため、人口で飼育するのは難しくありました。私は悩みました。処分したと言って、そっと連れて帰ることはできました。しかし、この状態で人工飼育はかなり難しく、いつまで生きられるかもわかりません。このまま生かしておくことが幸せなのだろうか・・・と。

ここのハトはペットじゃない

ペットであれば、迷わず親から離して、例え死んでしまったとしても、人工飼育を試みました。しかし、彼らはペットではありません。アスリートなのです。残酷に言うと、使えない個体はいらない というのが現実です。働かないもの食うべからずと一緒で、役に立たないものに与える時間もお金もないのです。それが、この厩舎のオーナーの考えでした。

私は一体何をしたいのだろう・・・

私は奇形のヒナを抱いたまま、途方にくれました。しかし、仕事は山ほどあり、悩む時間はそうありません。悩みに悩んだ挙句、私は言われたとおりにその子を「殺処分」することに決めました。しかし、どうやって殺したらいいかがわからず、楽に殺すには、どうしたらいいのか悩みました。

そして、悩んで悩んで、たくさん謝って、泣きながらその子を紙袋に包み、炎の燃え上がる焼却炉へ投げ入れました。

まだ、羽も生えていない赤子のヒナ。一瞬で炎の中に消え、そのはかない命は終わりを迎えました。私の手によって・・・。私はその場に泣き崩れ、こんなことをする自分に腹が立ちました。今、こうして記事を書いていても、涙が出ます。きっと、あの子は私を恨んでいるだろう。当然だ。だって、私に殺されたのだから・・・。

私は動物が大好き

私は動物が大好きで、大好きで、ペットの仕事に携わりました。なのに、守りたいために就いた仕事で、まさか命をこの手で殺すことになるとは、思いもしませんでした。私が殺した命はこの子だけですが、ハトの現場で殺処分となる子は少なからずほかにもいました。私はそのたびに目を背ける事しかできませんでした。

私は一体何をしているのだろう。何のためにこの業界に来たのだろう。

一つ救われたのは、その後、残った1羽の育児を母鳥が再開し、元気に巣立ったことです。

私だけじゃない

外国のお話ですが、動物の命を救いたいと猛勉強をして獣医になった女性がいました。その方が就職したのは、保健所です。その獣医さんは、たくさんの犬や猫を安楽死という殺処分を強いられました。

「私は命を守る為に獣医になったのに、なぜこんなにたくさんの命を奪わなくてはいけないのだろう」

そう考え、悩みこんでしまった彼女は、ある日この苦痛に耐えることができず、自分自身に安楽死の薬を注射し、命を絶ってしまいました。

 

動物が好きだから、みんな動物業界に来るのだと思いますが、このような悲しく辛い現実もあるということを、知って頂ければと思い、書かせていただきました。この記事は残酷で有、ショックや不快な思いをした方もいると思います。でも、経験者はこのような現実を書かなければいけないのではないかと思い、勇気を振り絞り書かせていただきました。

今でもあのとき私が奪った命は、正しかったのか、あのヒナは私を恨んでいるに違いないと、考えさせられています・・・。